Saturday, February 16, 2008

独りの珈琲

本棚を整理していたらこの題名の本が目にとまった。増田れい子著。三笠書房「知的生き方文庫」シリーズのうちの一作。1985年の刊行だ。
日々の何気ないことのエッセイ集で、後味がよい。

子供の頃からコーヒーをいれるのは僕の役目だった。渋谷に住んでいるころはコーヒー豆をミルでひいた。ハンドルを回すとゴリゴリと豆が挽かれ、ミルの下段の木箱にたまる。その木箱を引き出したときの香りはたまらない。当時はサイフォンを使っていた。アルコールランプを使うのでここは母親の仕事だった。コポコポ、ゴポゴポ、シュゴーッと実験器具のようなサイフォンを飽きずに見続けていたことを思い出す。

三軒茶屋に移ってからも「秀ちゃん、コーヒーないの?」、「お兄ちゃん、コーヒーいれてよ」と姉と妹にせかされたものだ。
そのころはネルドリップでコーヒーを作っていた。豆はお店で挽いてもらうことが多かった。ネルに適量の粉をいれて、適温のお湯をサッと回しかけて粉を蒸らす。そのあとは数回に分けてお湯をクルクルとかけ回せばできあがりだ。

用賀と池尻に住んでいたときもネルドリップでコーヒーをいれるのは僕の役目だった。僕がコーヒーを飲んでいると、必ず「私も飲む」とリクエストされた。「マクドやファミレスよりは美味しいけどドトールの方がおいしい」などとコメントしながらも美味しいと飲んでいたっけな。スコーンやマフィン、トーストやベーグル(ベーグルは手作り)がコーヒーと一緒に食卓にならんだものだ。

二子玉川に移ってから、部屋でコーヒーといえばもっぱらインスタントだ。ベランダから目の前の多摩川を見ながら遠くに富士山を見つつ飲むコーヒーは、それはそれでおいしい。たまにはゆっくりとネルでコーヒーをいれてみようかと思った。独りでゆっくりと楽しむのもまた良し。

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