Thursday, February 02, 2006

理由が知りたい

ビジネスホテルの東横インの事件がテレビや新聞を賑わしている。事件の大筋は、「建設完了検査時の駐車場を会議室やレストランに改造したりといった無断改築により、法定容積率を超えている」とのことだ。また、社長の「制限速度60kmのところを67~8キロで走っても大丈夫だと思った」などの開き直りに近い弁明も紙面をにぎわせている。

東横インは90%以上という圧倒的に高い回転率を誇り、優良ホテルとしてビジネスホテル業界の雄とされてきた。女性を多く登用、ホテルの支配人に運営の権限を委譲、他店舗の成功例を共有など、経営のケーススタディとしても使えそうな経営手法を採用してきた。
そのような優良企業が利益追求のために道を踏み外したことは残念に思う。

東横インの社内研修の内容や企業文化が従業員や関係者へのインタビューで明らかにされている。その中の一つ、「自分を見つめなおすべく個室で何時間も過ごす」研修が紹介されていた。これについて、朝の番組のコメンテーターが「独房のようですね」、「洗脳させようとでもしているのでしょうか」と話していた。しかし、この研修内容は、多くの企業で取り入れられている。特に外資系企業での導入が盛んだ。「ソロ・ビバーグ」と呼ばれるこの研修は、山中で丸一日を一人だけで、最低限の食料で過ごす。管理職や経営層向けの研修として定着している。組織は個人の集合なのだから、個人が価値観や、やりたいことややりたくないこと、目指す人生を考える良い機会となり、なかなか好評のようだ。日本の座禅に通じるものがあると思う。
先のコメンテータは、名の通った企業がソロ・ビバーグを取り入れている場合であれば、きっと「革新的ですね」、「やはり個人を重視している会社は素晴らしいですね」と言ったはずだ。

その会社が何をやっているかなんてどうでもいいではないか。なぜそういう事件が起きたのかを知りたい。原因がわかれば解決策も自ずと見えてくるものだ。

東横インが「自分を見つめなおすべく個室で何時間も過ごす」研修を導入していたことと、無断改築をしたことは関係ない。利益追求が行き過ぎたことが無断改築を招いた原因だと思う。
これは、昨年から続く日本航空の事故やトラブル、マンションの耐震性偽装事件、ライブドアの粉飾のどれにも相通じるものだ。
自分の利益を追求すれば、相手に犠牲が生じる。win-winの関係という言葉も、2者が共通の敵を見つけたときに成り立つだけだ。2社がwin-winになるとき、必ず誰かが犠牲になっている。
人間が自分の利益を追求することは本能というか本質なのだと思う。だからこそ、どの宗教でも何千年も前から、自分を犠牲にして他人に貢献する自己犠牲が尊いものとされているのだろう。

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