Sunday, November 25, 2001

二足の草鞋

経営と技術の両方を知っている人材だとか、戦略と実務の両方を
語れる人材が必要ということは、もう何年も言われている。僕が
社会人になったらも良く聞くし、何十年も前に書かれた本にも度々
登場する。
こうも長くの間「必要だ」と言われ続けているのはなんでだろう。
そのニーズを満たす人がいないのだろうか。

そんなことはない。実際、複数の専門領域を持つ知り合いが何人
かいる。天才的なプログラマでありながら会計士だったり、グ
ロービスに通う医学生、文学部出身のコンサルタント、生物学修
士の新聞記者...。こういう僕自身も、複数の専門領域を持って
いる。

では、他に理由があるのではないか。僕は2つの理由があると思う。

まず一つ目、二足の草鞋を履く人がいないのではなく、そういった
人が活躍できる組織や職種が少ないことが一番の理由だと思う。
社会では、何か一つの職業を選ぶ必要がある。そしてそれは往々に
して、特定の職務や専門性を求められることが多いわけだ。経営規
模の大小を問わず、組織という物は概して縦割りだ。柔軟性があっ
て、オーバーラップしている組織もあるが、それぞれの組織は明確
な責任範囲があるという点において、とても閉じた状況に置かれて
いる。

二つ目の理由は、技術者の地位が低いこと。
技術を語る経営者は求められるが、経営を語る技術者は煙たがられる
ことが多い。コンサルティングの仕事を通じて知り合った会社の多く
は、そんな社風を持っていた。製造業や研究開発が基幹業務の会社で
あっても、営業、マーケティング、経営企画、財務等の部署がいわゆ
る出世街道なわけだ。
そして、それらの部署にいる人が技術に詳しくないことは許されるが、
研究者や技術者が財務諸表を読めないと馬鹿にされる。

そういえば、二足の草鞋って言葉は、良い意味だけではないし、二兎
を追うもの一兎をも得ずともいう。
果たして、複数の専門領域を持つ人材、俗に言うπ型人間というのは
本当に求められているのだろうか。

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