Thursday, December 03, 2009

握手で別れる習慣

星家では、家族で会った時は必ずお互いに握手で別れる習慣がある。両親とも兄弟とも、「じゃ、また」と握手をして別れるんだ。

子供の頃から、母は僕を、姉妹をしかり続けた。「靴は自分で磨け、魚は綺麗に食べろ、お洒落はするな身だしなみは気をつけろ、女遊びは絶対にするな」などなど。僕が離婚したときは、「惚れた女一人幸せにできなかったことを一生忘れるな」とすごい剣幕でしかられた。
ほんの数週間前、医師から聞かされた病名と余命を母に伝えたときも、「わかった」と静かに答えたと思ったら兄弟3人をベッドの横に呼びつけて、「そこに座りなさい。親戚へは○○と○○へ連絡。保険や通帳はどこどこ。7日も喪に服さず、すぐにそれぞれが果たすべき責任と生活に戻りなさい」とガミガミ言いながらその場でチェックリストを作らされたんだ。まいっちゃうよ。

そんな母と、握手をした。生気なく冷たくなった手と握手をしてきた。いつものように、「じゃ、また」と。あまりに急だった。突然だった。

けど、そう、「じゃ、また」なだけなのだ。あと数十年でまた家族が揃うときが来る。そのときまでの握手だったのだ。ただそれだけのことさ。

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